新しい仕事を始めてひと月が経ち、急に佳境を迎えたその日も遅くまで働きました。
すっかり体も頭も疲れ切った状態で家の最寄駅にたどり着いたのは22時前。
こんな時にはサクッと何か食べて帰りたいなぁという気持ちになるのですが、残念ながらお酒を飲みたい気分ではないと、入れそうな雰囲気の多くのお店は大体ラストオーダの時間をとっくに過ぎている時間。
そんな時、引越し後間もなくてまだまだ街を知らない私に「気軽に寄って簡単に食べて帰る選択肢」を与えてくれたのは最寄駅から徒歩30秒くらいにある「ミスタードーナツ」でした。
私はミスドの「汁そば」が結構好き。
あっさりしたスープと何の個性もない中華麺にネギだけが乗ったシンプルを極めたメニューは、たとえ夜遅い食事であったとしてもギトギトなとんこつラーメンに比べれば罪悪感は少なく、乙女心をくすぐります。
その晩も「汁そば」を思い出したら立ち寄らずにはいられず、暗い駅前でオレンジ色の優しい光を灯したミスドに足を踏み入れてしまいました。
「ドーナツ」と「モップ」
温かい晩御飯をお腹に詰め込んで一息ついたその時、きっかけがなぜだったのかは思い出せないんですが、「そういえばミスドの運営会社はダスキンだった」と大学で専攻していた経営学の授業で聞いた話がフッと頭をよぎりました。
久しぶりに思い出したダスキンの名前。
私の実家は商売をしているので、お店にはダスキンの黄色いモップが置いてあり、割と身近な存在でした。その一方、習い事の帰り道にたまに母親が寄り道で連れて行ってくれるミスタードーナツも思い出深い存在。
どちらも私にとっては馴染みのあるブランドだったんですが、「同じ会社だったとは!」という衝撃は今でも忘れられないので思い出したのかもしれません。
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さて、ダスキンをご存知ない方へ少し紹介をすると、
ダスキンは掃除道具(モップ)のリースや清掃の事業をしている大阪の会社。
会社の歴史をググっていたらw●kipediaに、
“設立時、「株式会社ぞうきん」って名前になりかけて社員から猛反対を受けた”との記述があったので思わず笑ってしまいましたが、本当かどうかはさておき、もしかしたら「ぞうきん」の方が面白くて良かったんじゃないかなぁ… と私は思ってしまいます(笑)
ダスキンは日本全国に販売網を持ち、
フランチャイズでレンタルモップ事業を展開していました。
今フランチャイズといえばコンビニも取り入れている流通の代表的な展開手法ですが、
ダスキンがフランチャイズを始めた1970年頃はまだまだ日本では浸透していないビジネス形態だったそうです。
そんなモップのレンタルとか店舗の清掃をしている会社がある日突然「ミスタードーナツ」というアメリカのドーナツチェーンを日本に持ち込んで始めることになります。
飲食事業を展開していた会社ではないので、なぜ始めたのかが私的には共通点がないように見え、不可解に思っていたのですが、気になってしょうがないので何が軸になって始めたのかを調べてみたところ、共通点は「フランチャイズ展開」でした。
お客様が意識していない資源を活かす
確かに、店舗のお掃除道具やマットなどはダスキンの事業のものを活用できそうですが、それだけだと飲食業という全く異なる資源を使って展開しないといけない事業に参入するにはちょっと筋を通すのが難しい。
ドーナツとモップの関係というよりは、それらを成立させるインフラである「流通」のノウハウを生かすことを考えての参入だったようです。
多角化をしていく時、「業界・業種や、使っている材料や機械を使いまわせるから」という商品やブランドとして目に見えやすいものの活用という発想に陥りがちではありますが、自社の持っている無形のノウハウ、今回でいえば「流通」だとか、「多角化店舗運営」裏方のノウハウが展開の軸になることもあるんだなぁと思う一例でした。
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なんだかすごく真面目なビジネスの話になってしまいましたが、私たちも転職や副業を考えた時、自分の属する業界や職種で考えがちです。
私も転職を考えていた時期があったものの、「業界・職種」で考えてもなんかしっくりこない、私のできることってなんなんだ…(泣)と、なんの取り柄もない自分が嫌になることもしばしばで、「今はまだ転職なんてしっくりこないだけ」と諦めていたのですが、もしかしたら表面的な「できる仕事」「わかる仕事」という考え方らか少し離れて見てもいいのかもなと思いました。
確かに業界の知識、職種のスキルは転職の指標にとても役立ちますし、わかりやすいです。
ただ、そこで行き詰まるのであれば、自分の行動や趣味嗜好を掘り下げてみれば業界や職種を超えられるスキルやノウハウを身につけているのかもしれません。むしろ具体的なものでなくてもいいような気もしています。
例えば「好き」とか
「続けられるな」と思うこととか。
そして、一つの分野で何かを身につけるには、「継続して繰り返す」ことを一定以上の期間続ける必要があるとも思っています。
今自分に何も見当たらないなぁと思ったら、この先「継続して繰り返すことができそう」なことをまずは選べばいいんじゃないのでしょうか。
今まさに始める一歩目の選択のおかげで、何年後かにまた同じように転職や副業を考えた時に「私はこれがある」と言えるようになるかもしれない、きっかけは常に今この時点から。
とぼんやり考えながらお店を後にしたのでした。
しかし、この時間にしてはなかなか気持ちのハードルが高かったのですが、
背徳の夜中のフレンチクルーラー。
デブになるきっかけも今この時点から……。
気をつけたいと思います(笑)