コラム

「継ぐ・続く」和菓子のはなし

2017年9月4日

和菓子女子との出会い

先日、以前からずっと会ってみたいと思っていた和菓子女子・せせなおこさんに会いました。

彼女が運営する「暮らしの中に和菓子を。」がコンセプトの和菓子専門ウェブメディア「せせ日和https://sesebiyori.wordpress.com)」は、和菓子自体の紹介だけでなく、和菓子を作る人、和菓子が育まれた街のことなど、様々な視点で語られ、和菓子についていろんな切り口でアプローチがあるのですが、とても一人で活動しているとは思えないほど日々更新がなされ、その一つ一つの情報もしっかりしたものばかり。

彼女の活動が途切れることなく続けられていること自体が素晴らしいなぁ、と尊敬します。

話をしていても、和菓子の良さとそれが生まれた世界や文化を広く多くの人に伝えて行きたい!という気持ちが根底にしっかりあり、積み重ねられた知識がベースとなって、それを咀嚼してわかりやすく伝えてくれるので、ずっと話を聞いていたくなります。

写真も美しくて可愛らしいので必見です。

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さて、二人で会ったのはもちろん和菓子があるお店、大阪・靱公園が目の前の「CHASHITSU Japanese tea & Coffee(http://chashitsu.jp)」

和(お茶)と舶来物(ソーダやコーヒー、ラテなど)をうまく組み合わせたドリンクやスイーツが面白くて斬新なお店。

写真の緑茶っぽく見えるのはグリンティーソーダ。
抹茶をほんのり甘いソーダで割った飲み物。お茶というより、さっぱりとした清涼飲料水という方がしっくりくる不思議な飲みのもの。

このお店でせせさんの活動についてたくさん話を聞かせてもらったのですが、活動を続ける秘訣は、伝えたい「対象(=和菓子)」への愛なのかなぁと思いました。

伝えたいとか、自分の使命とか、そういうのは抜きにして、とにかく対象物が好きだから続けられる。

そんな気がしました。

 

「後継者がいない」は和菓子の世界も

長く続いて来たお店が多い和菓子の世界も、今は後継者が不在で廃業に至るところが増えているそうです。
特に和菓子業界の「継ぐ」は会社を引き継ぐだけでなく、和菓子自体を作る職人さんがいて成り立つ世界でもあるので、引き継いですぐにどうこうできる業界ではなく、その技術も継承していかなければなりません。

和菓子に限らず、長く続いて来た業界の多くがぶち当たっている壁の一つでもある「技術継承」

一朝一夕ではどうにもならないことです。

例えば、途絶えて困ってしまう前に、「どういう仕事に後継者がいないのか」ということや、「どんな技術が職人の手によるもので、それによって何が成り立っているのか」ということを伝えるということは「継ぐ」ための第一歩だと思います。

そして、もし今の時点でその技が「特に必要ない」と思われていようとも、もしかしたら未来に必要とされる仕事や技術なのかもしれない。

変な例えですが、人も日々生きて行く中で「今、この瞬間に消えてしまいたい」と思うことがあると思うのですが、その先、生きていたからこそ「生きていてよかった」と思える瞬間にめぐり合えることはあるわけで、それと同じように、その技や物事に少しでも価値を置く人が熱意を持って次の時代まで、少しでも技術を長生きさせるということはとても意味のあることだと私は思うから、「続く」を目指すこと自体、とっても意味のあることなんだなぁと感じます。

 

知ってもらうための活動は、続けるからこそ、伝えて残していこうと思ってくれる新たな仲間に出会わせてくれるので、せせさんの活動はとても素晴らしいことだと思いました。

 

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<鹿児島・湯之元せんべい梅月堂「ラムドラ」>
(湯之元せんべい梅月堂 http://yunomoto-baigetsudou.com

おみやげもいただいたのですが、もちろん和菓子!

創業から90年以上という鹿児島の老舗和菓子屋さん「湯之元せんべい梅月堂」さんのどら焼き。

パッケージの封を切ると、ふわっとラム酒が香ります。
どら焼きの中の餡にラム酒の効いたラムレーズンがたっぷり入っているそうで、大人の贅沢なおやつといった感じ。

お土産をくれたせせさんから「コーヒーと合いますよ!」と言われていたので、ブラックコーヒーと一緒にいただきました。

しっとりとしたどら焼きの生地とラム酒の香りのせいか、和菓子を食べているというより、ブランデーケーキを食べているような気にもなるけれど、中には餡がたっぷりと詰まっていてやっぱり和菓子かも、と思わされる新しい風味との出会い。

鹿児島で長く続くお店の歴史も知りたくなった一品でした。

美味しかったです、ごちそうさまでした。

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